緊急 4-1 【記憶回想Ⅰ】
【Part 1】
……グリフォン休憩室。
カリナ「指揮官様、今日は一つ特別な任務があります」
カリナ「AR小隊と関係していることなので、彼女たちに説明を聞いてください」
M4A1「……」
カリナ「……M4A1?」
M4A1「あ、すみません」
M4A1「指揮官が来たのを、気づきませんでした」
カリナ「M4さんがぼっとしてるなんて珍しいですね」
M4A1「え?いえ、私は……」
カリナ「M4さんっていつもぼーっとしてるような雰囲気がありますけど、実際に見るのは初めてかも」
M4A1「ええ……まあそういうことにしておきましょう」
M4A1「ちょっと……考え事をしてました」
M4A1「でも……本題に戻りましょう。今日指揮官に訪ねてきたのは、報告の必要がある案件があるからです」
M4A1「私達AR小隊がこの前の作戦資料を片付けてましたが、付近の座標に歪みができたのを確認しました」
M4A1「ここです。捨てられたデータベース」
M4A1「データベース自体に問題はありませんが、現在の座標と以前表示されていた位置が一致しません」
カリナ「そうそう、これは非常に珍しい状況です。指揮官様、調べてみましょうか?」
カリナ「もし鉄血の新しい欺瞞戦術なら、大功を立てることもできますよ!」
【Part 2】
……戦闘終了、キャンプにて集合。
M4A1「指揮官、カリナさん。これが例の座標で見つけた物です」
カリナ「これは……音声録音ファイル?」
M4A1「はい、では再生します」
オーディオの再生を開始……
『They…』
『…are』
『…in your…』
『…house』
……再生終了。
カリナ「アレらは……あなたの家の中に……いる?」
カリナ「どういう意味でしょう?誰がわたしの部屋に?」
M4A1「意味不明の言葉。一種の暗号なのでしょうか?」
カリナ「うーん……ざっと見たところ、暗号化されてるって感じですね」
カリナ「ちょっとわたしが調べてみます」
カリナ「解けました!新しい座標を見つけましたよ!」
M4A1「カリナさんって…意外と凄い方でしたね」
カリナ「人をバカにしてません!?」
カリナ「まあ、こんな旧式の暗号化の仕組みなど知らなくて当然ですよね!」
カリナ「でも……たかが座標一つと、『あなたの家の中』だけでは何もつかめませんね」
M4A1「……『統合ネットワーク記録保存共有装置』」
M4A1「いわゆる『クラウド・マインドマップ』は、私達人形のメモリのストレージです」
M4A1「本体の役割をするメイン人形があって、このクラウド・マインドマップを通じて編制拡大をして、大量に製造したダミー人形で自らの身を守れます」
カリナ「その通りですけど、極端な状況ではメイン人形も壊れる危険があります」
M4A1「はい。人形の本体が壊れた瞬間、人形の記憶は全部消えて、工場出荷段階にリセットされてしまいます」
M4A1「ですので、ネットワークと状況が許されれば、戦術人形は出撃する前に自らのクラウド・マインドマップをバックアップします」
M4A1「私達の言葉で言いますと、記憶をサーバーにアップロードする…とも言えますね」
カリナ「マインドマップのバックアップにはかなり時間がかかります。ですが作戦経験を保存するためですから、定期的にしないと駄目なんです」
M4A1「しかし潜入や浸透作戦中は、掩蔽のためデータを基地のサーバーにアップロードすることは出来ません」
M4A1「こういう場合、人形は記憶を映像日誌にバックアップすることで以後の回収作業と情報提供をしやすくするのです」
カリナ「……その通り。で、M4さんはこれが誰かのクラウド・マインドマップのバックアップだと思ってるんですか?」
M4A1「今はただの推測に過ぎません。もっと情報が必要です」
カリナ「なんか面白い事件に出会ったかもしれませんね。指揮官様もそう思いません?」
カリナ「はい、では早く次の座標へ前進です!何が出るかな」